■ABOUT 10弦ギター (10弦ギターの基礎知識)
 

※ウィキペディアの説明もご参照ください→「10絃ギター」(日本語版)「Ten-string guitar」(英語版)

 

●10弦ギターとはどんな楽器なのか、フォークギターとクラシックギターの違いもよくわからない自分ですが、10弦ギタリストの方に取材して伺ってきました。(編)

Q.10弦ギターって何ですか?
A.スペインのギタリストであるナルシソ.イエペスさんが発案、ホセ・ラミレスという有名なギター製作者が第一号を製作したものです。 イエペスさん(1927〜1997)は、映画「禁じられた遊び」の音楽を担当して日本でも有名な世界的ギタリストでした。いまでもギターといえば「禁じられた遊び」といわれるほどですが、曲の作者は不詳とされていました。しかしどうもイエペス自身の作曲という説もあるようです。そのイエペスさんが1963年に発明したものです。普通の6弦ギターに新たに低音弦4本を追加したギターです。調弦は下図のようになっています。7弦から10弦までは、既存の4〜6番弦を使いますが、今では7弦については専用の弦も発売されています。それは一般のギターショップでは売っていませんので、現代ギター社ギタルラ社ファナの通販で購入します。

Normal(イエペス式) ド(C)−シ(B)♭−ソ(G)♯−ファ(F)♯

…7弦が一番音が低くなっています。これをさらに下のH(シ)に調弦することもあります。
他の弦も違う調弦をすることがあります。他の調弦方法もあるんですよ(後述)。

 

Q.なんで10本もあるんですか?
A.その質問が出るということは、追加されている弦の音高が不ぞろいだからでしょう(笑)。たしかにヘンな調弦ですよね。でもそこに10弦の秘密があるんですよ。私たちが通常耳にしている音は、一つの音だけではなくて、実はいろいろな音程の音が合成されてできているんです。たとえばピアノでドを出しても、ド以外の音がそこに重なっているので響いて聞こえるのです。これを倍音といいます。これがないと、電波の発振音みたいに単調で味気ない音に聞こえてしまいます。ピアノはたくさんの弦でできていますね。ドの音を弾くと、他の弦の音が共鳴します。だからペダルを踏むと共鳴して音が長く伸びるんですね。ペダルが上がっていることで弦を鳴らないように押さえていて、余分な共鳴音(倍音)をカットしているというわけです(厳密なことをいうと完全に倍音はカットできませんが)。ドの音にはミとかソとか、共鳴する音が決まっています。ピアノの場合はどの音を弾いても必ずどこかの音が共鳴しています。ところが6弦ギターの場合は、弦が6本しかないので、音階の12音すべてに均等に倍音がそろってないんですね。ちょっと弾いてみましょう。こうやって一音弾くごとに素早く消音してみます。…ほら、残響がよく残る音と残らない音があるのがわかりますね。イエペスさんはこのアンバランスさがたまらなくイヤだったようです。けれど今までにそんなことを考えた人はいなかったんですね。弦が6本以上あるギターはずいぶん昔からありました。けれどそれは単に弾ける音を増やしたかったというだけだったのです。倍音が揃っていないのは気持ち悪い、とはある意味異常な感受性といえるでしょう。まあ、それが天才の所以かもしれませんが。そういう理由で、ギターのすべての音が等しく倍音を持つようにと、10本の弦をこう調弦することで解決したわけです。しかし、よくこんなことを思いついたと思います。イエペスという人は大変な勉強家で、ピアニストにバカにされたからと、ギターテクニックを改良進歩させるために、解剖学まで学んで全身の筋肉の仕組みまで調べて、右手と左手のテクニックを追求したといいます。スペイン人というより、ちょっとドイツ人ぽいですね。見かけもラテンでフェロモンなすペイン人というより謹厳実直な風体でした(笑)。すごい小柄な人だったので、10弦ギターがやたら大きく見えたものです。だから、彼のレコードはドイツグラモフォンが専属録音していたんでしょうかね。今10弦ギターを弾いている人のほとんどが、イエペスの影響を受けていますね。自分もそうですけど(笑)。

Q.演奏するにあたって違う点はなんですか?
A.1弦が遠いですねえ(笑)。指板が広くて、馴れていないと、たぶんどこにどの弦があるかわからないんじゃないかなあ。また8とか9とか10弦をp指(親指のこと)で弾くのもなかなか厄介かも。手が小さい人だと、右手が緊張してしまうかもしれません。でもいちばんの違いは、6弦ギターとはまるで音の鳴り方が違うということです。いつも通奏低音が鳴っているような感じがします。反響しない部屋で弾いているのに、なぜかリバーブの聞いたサウンドルームにいるみたいです(笑)。音質もだいぶ違いますね。だから、余分な共鳴音を消音するテクが必要になります。なにしろこうやって話声だけでも弦が共鳴して鳴ってしまうんですから。ただ音楽的に何を余分な共鳴音とするかは難しいでしょうね。ギターの神様といわれるセゴビアさんが10弦ギターに対して、「官能的な女性を醜い老婆にした」と言ったとか言わないとかの話があります。また、10弦ギターは邪道だという人もいます。消音が下手だといやらしい演奏になってしまうし、ただ消せばいいというわけでもないし、さじ加減が難しいですね。イエペスさんのレコードを聴く限りではそこらへんを見事にコントロールしてますね。
Q.オリジナル曲はあるんですか?
A.10弦向けの曲もいくつかありますが、開放弦として使うのが多いですね。クラシックギター曲にはピアノからのアレンジものが多いのだけれど、その際、随分音を省略したりオクターブ上げたりします。しかし10弦にすると、多少そのハンデを克服できます。7番まではフレットを押すことも多いですが、8〜10は開放弦として使うことがほとんどです。グラナドスのスペイン舞曲第5番などは、最初の印象的な低音パッセージを、8と9を使って弾く方法もあります。イエペスがそうやってました。調弦を変えてフルに10本使うんだというガッツのある若者もいるみたいなので、21世紀は10弦技法が華開くかもしれません。現在、イエペス式調弦の他に、次のような調弦方法が一般的です。これ以外にも各自いろいろな方法があるようですし、まだ弦が足りないと11弦とか15弦とか24弦、さらにネックを双頭にしてハープギターとしたりという方向に向かう人も後を絶ちません。とにかくギターというのはヴァリエーションが無限なんですね。ギターは6弦、というほうが古いのかもしれませんよ(笑)。

Normal−Alternative
C−B♭−G♯−F♯

…8弦をイエペス式より1オクターブ下げる

Romantic
D−C−H−A

…バロックリュート式調弦
弦は専用弦を使う
(ラ・ベラやハナバッハ)

 
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